裁判員制度広報に関する懇談会(第4回)

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日時
平成16年12月16日(木)午後1時30分から3時30分
場所
最高裁判所公平審理室
出席者
(委 員)
井田 良,篠田節子,藤原まり子,吉田弘正,渡辺雅昭(五十音順・敬称略)
(裁判所)
戸倉審議官,中村総務局第一課長,楡井刑事局参事官,大須賀広報課付

席上配付資料

意見をお聞きしたい点(第4回)

  • 17年度の実施が考えられる個別の広報企画の構成・内容,対象者,効果的な活用方法等に関する工夫,留意すべき点について
    • タウンミーティング,キャラクター,ビデオ,模擬裁判などレジメに掲げた企画
    • その他特に実施すべき企画
  • その他,当面の広報活動において留意すべき点

平木典子委員のご意見

  • 裁判員制度用のキャラクター,ロゴ,キャッチコピーについて
    • 実在の人物と動物のキャラクターあるいはアニメの組み合わせで,ビデオ,テレビなどで将来ちょっとした質疑をしてもらうことを念頭に置いて決めておく。
    • キャッチコピーは,専門家にお願いしたほうがよい。私が考えるとすれば,月並みかもしれないが,「みんなの裁判」など。
    • ロゴは,上記動物のキャラクターあるいは正義の象徴などではどうか。
  • ビデオについて
    • 上記キャラクターなどを使ったアニメ形式の模擬裁判,あるいは動物による裁判のビデオを作られてはいかがか。また,小・中学生用に,例えば「ドラえもん」,「孫悟空」,「白雪姫と七人のこびと」など,誰もが見て知っている登場人物が,その人なりに特長を生かして,その人らしく発言するなども,よいのではないか。
    • おもしろそうでありながら,厳粛な気持ちになれるビデオにできるとよい。
    • 模擬裁判のビデオは,大人用と子供用を同時に公開することが望ましい。子供用を大人が見てもよいし,子供に対しては長期的に教育していくことが必要。
    • 公民館や図書館,女性会館など,地域の住民の集まる所などで勉強会などをしていただくときに貸し出す,または,供与することも考えられる。その場合は,説明できる人とセットで行うことも必要。
  • タウンミーティング
    • ビデオと異なり,制度設計の進行に従って内容を変えることができるので,分かっていることから知らせていくようなイベント中心に始め,徐々に広げていくのがよいのではないか。
    • ビデオなどを使って,上映会,勉強会を開いてもらうことをお勧めすると,会場側の催し物のヒントとなるかもしれない。
  • 模擬裁判
    • 実際にその場に参加して傍聴する形式と,ビデオに撮って説明する責任者をつけて公開するという2つの方法があるのではないか。
  • その他
    • 現在,「司法の窓」がどんなところに配布されているか知らないが,その配布先を広げることを考えてもよいかと思う。特に,裁判員制度について掲載された号は発行部数を増やし,広く配布する。また,可能であれば,捨てられてしまわないように,関係・担当部署や人,例えば学校であれば社会の先生などに,直接渡るようにすることがよいと思う。

裁判員制度に関する当面の広報活動について

  • 広報目的,目標
    • 裁判員制度の導入,意義,手続概要等を周知して国民の関心を高める。
    • 裁判所,刑事裁判手続への関心を高める。
  • 主な具体例
    • 裁判員制度用のキャラクター,ロゴ,キャッチコピー
      • キャラクターの選択(実在する人物にするか。その人数。架空のキャラクターとする場合の留意点等)
      • キャラクター等の効果的な利用方法など
    • ビデオ
      • 15分程度の刑事手続の説明ビデオの製作
      • 他に製作すべきビデオの内容(雇用者向けのもの,小中学生向けのもの,アニメ形式のものなど)
      • その製作に当たっての優先順位
      • 広報効果の期待できる配布(貸出)先など
    • タウンミーティング
      • 企画の構成内容(全国各地で,制度説明,ビデオ上映,パネルディスカッション,質疑応答等を組み合わせて実施するなど)
      • 効果的な活用方法(参加人数が限定されることへの対応等)
      • 国民の認識・要望の把握方法など
    • 模擬裁判
      • 効果的な活用方法(刑事裁判のイメージがよく分かる反面,参加人数が限定される)
    • 出張講演会
      • 各地で裁判官などが,裁判手続の説明,ビデオの上映,質疑応答等を実施。
      • 効果的な活用方法(参加人数が限定)など。
    • 法廷傍聴
      • 各地の裁判所において,刑事裁判の傍聴,裁判官又は係員による手続説明,質疑応答等を実施。
      • 効果的な活用方法(参加人数が限定されることへの対応,分かりやすいものとするための方策等)など。
    • 裁判員制度専用ホームページの開設
      • 備えることが適当と考えられる機能(手続に関する解説,各種データの掲載,双方向性の具備等)など。
    • マスメディアを利用した広告(テレビCM,ラジオCM,新聞広告等)
      • 対象者の想定,他の企画との組み合わせなど。
    • 広報誌,法曹三者名義のポスター,リーフレット(パンフレット)
      • 広範囲に配布

第4回会議録

【戸倉審議官】

本日は,平木委員が御欠席ですので,席上に委員の御意見を記載したメモを配布しております。
藤原委員は前回御欠席でしたが,何か補足される点はございますか。

【藤原委員】

何本かの企画を同時進行させることが必要ではないかと思います。そして,諸外国の状況についても広くいろいろな方に話していただくことも重要だと思います。また,そもそも裁判がどのような経緯で誕生したかということも知らない人は随分いるのではないかと思います。こういったことを格調高く筆の立つ方に書いていただければよいのではないでしょうか。
例えば,放送大学にはとても優れた授業をなさる先生方がいらっしゃるので,お願いするのも一案かと思います。また,先日NHKが「明日を読む」という番組で解説していましたが,大変短い中で分かりやすい解説をしていました。こうしたものを参考にして検討するとよいと思います。

【戸倉審議官】

第1回の懇談会で資料8-2として平成17年度の広報アイディアをお示ししました。今回は,それぞれの企画についてどういうコンセプトでどういう人を対象にして実施すべきなのか,どのような点に留意すべきなのか,企画同士の組み合わせはどうすればよいのかといった点について御意見を伺いたいと思います。
まず来年の広報計画として考えているものを御説明させていただきます。

【大須賀広報課付】

平成17年度の裁判員制度広報については,広く国民の皆様に裁判員制度を周知して,理解を深めていただくために,相当大規模な広報が必要になると考えて,予算要求をしています。実際にどの程度の予算がつくのかは現在のところ不透明であり,具体的な実施計画についてはまだ検討中の部分もありますが,大まかなところはお手元の「裁判員制度に関する当面の広報活動について」と題したレジュメのとおりです。
平成17年度は,本格的な広報を実施する1年目になります。各種世論調査では,制度の認知も必ずしも十分とはいえない状況なので,裁判員制度の導入について引き続き広報する必要があります。また,関心を持っていただいた方に対しては,さらに関心を高めていただくために,裁判員制度の意義や手続内容を周知していく必要があると考えています。
その一方で,一般国民の皆様にとっては,そもそも裁判所や刑事裁判自体に対する関心も余り高くないと思われますので,こういった点についても重点的に広報していく必要があるのではないかと考えております。
そこで,裁判員制度の導入,時期,手続概要などを周知して国民の関心を向上するとともに,裁判所や刑事裁判に対する国民の関心の向上を図るということも念頭に置いて,広報計画を検討しています。
具体的な広報活動は,レジュメに列挙したものを主に検討しています。個々の企画について今後さらに検討を要する部分は,各項目に簡単に記載しました。
これまで委員の皆様から,当面は「裁判員制度」という言葉に触れる機会を多く持つことが必要であるという御指摘をいただいておりました。そこで,裁判員制度のキャラクターやロゴ,キャッチコピーを作成して広く利用するとともに,法曹三者が協力して,ポスターやリーフレットなどを広範囲に掲示・配布したり,テレビのコマーシャルや新聞広告などメディアを利用したり,裁判員制度専用のホームページを開設するなど,複数の広報手段,ツールを組み合わせ,「裁判員制度」という言葉と制度そのものを認識してもらう機会を多く設けようと考えています。
裁判員制度に関心を持っていただいた方に対しては,裁判員制度の内容についてさらに理解を深めてもらうために,ホームページやビデオ,タウンミーティング,模擬裁判,出張講義,法廷傍聴といった機会を利用して,裁判員制度の意義や手続を説明したいと考えています。さらに,各種の広報メニューの存在自体もそれぞれの中で紹介し,なるべく知りたいと思ったときにすぐに情報にアクセスできる形を作っていきたいと考えています。
また,一方的に働きかけるだけではなく,聞き手となる国民の皆さんの話を伺い,それを咀嚼して広報を行っていくとより効果的であると考えています。そのために,ホームページに意見を聴取できるコンテンツを設けて双方向性を持たせたり,タウンミーティングや出張講義ではなるべく会場から意見を聴き,質疑応答を通じて,国民の生の声を取り上げることも考えています。
そうは言いましても,裁判所の物量にも限りがあるので,すべての国民の方々に直接働きかけることは事実上困難です。そこで,波及効果の期待できる学校の先生や経済団体,自治体の広報担当者等を重点的対象として説明を行ったり,模擬裁判などの体験型の催しに参加してもらい,二次的広報の実現につなげていけないかを検討中です。
裁判所や刑事裁判手続一般といった司法全体についての啓蒙活動も,ビデオやホームページ,法廷傍聴,模擬裁判などを通じてなお一層の周知を図っていきたいと考えています。

【戸倉審議官】

情報を伝える量と質は,それぞれの企画によって違います。模擬裁判や出張講演会,法廷傍聴等は対象者が非常に限られた数の方になる代わりに,相手の反応を見ながら話ができるという意味では非常に効果的な手段だと思っています。これに対して,マスメディアを利用した広報は,多人数の相手には伝えられますが,一方通行になります。それぞれの対象や内容を手段の特徴に応じて選び,組み合わせを考えないと,なかなか効果的な広報はできないのではなかろうかと思います。
現在,法曹三者で30分~40分程度のドラマ仕立てで裁判手続を説明するビデオを平成17年3月末までに制作しようと計画しています。

【吉田委員】

そのビデオは,裁判員制度が入ってどういう格好で法廷が動いていくかを説明するものですか。

【戸倉審議官】

そうです。ドラマ性を出そうとすると,非日常的などんでん返しの展開になりがちです。興味は引きますが,裁判を広報する立場からは,裁判自体が非日常的なものながら,めったに起きないことをあたかも日常的に起きることのように示すのは問題ではないかという気がします。地道に実際ありそうなものを題材に進めていく方がよいのではないかという一方で,人目を引いて見てもらわなければ広報にならないので,裁判員の一言で展開が全く変わってしまうドラマティックなものがよいのか,いろいろな案があり得ると思いますがいかがでしょうか。

【井田委員】

法律の施行まではまだあと4年半ほどあり,制度の個々のあり方や細かい部分の詰めができていない現状では,マニュアル的に細かく描くのではなく,裁判員に何が期待されて何が求められているのかを伝え,なぜ司法参加が必要なのかというイメージを持てるようなものがよいと思います。おもしろく見た後で,「ああなるほど。それならやっぱり素人がかかわった方がいい。」とか,「こういうことだったら自分も言えそうだ。」と思える,イメージ的なもので最初はよいと思います。なるべく短いもので,パンフレットにCD-ROMが付いていると見たくなりますから,そのようなすぐに見られるものを作るとよいのではないでしょうか。他方できちんとビデオの形を整えることも必要でしょうが,段階的に考えて,制度導入時期が近づくほどマニュアル的なものに近づけていくとよいのではないかと思います。

【藤原委員】

今までこういうものは被告が中心のドラマが多かったと思いますが,今回は裁判員がどういう活動をするのか,どういう参加の仕方をするのか,裁判員と裁判官のやり取りがどう行われて,どのような時間の使われ方がされるのかなどが重要になってきます。今までのドラマの裁判のフォーカスとは随分違ったものが必要だと思います。
また,殺人などは日常茶飯事ではない事件ですが,こうした相当シリアスな犯罪に裁判員は動員されるわけですから,どのくらいの凶悪度の事件が対象になっているのか知らせる必要があるのではないでしょうか。そのあたりは裁判所からおおよそ事件を示して発注しないと使えるものにはならないのではないかと思われます。きちんとこういうタイプの犯罪で作りたいということを言わないと,的の外れたものばかりが出てくるおそれがあるので,このあたりが発注者の注意すべき点だと思います。

【戸倉審議官】

まさに,事件によって裁判員が判断するために見る証拠は全然違います。被告人が争うとした場合には,その争うタイプも事件の種類によって違います。

【藤原委員】

そうだとしたら,相当裁判所から立証の仕方も含めて,どういうタイプのものが比較的シナリオライターにとって書きやすいかを念頭に置いて細かく伝える必要があります。あまり難しい展開にならないようなものから手始めに少しずつ積み上げていく必要があると思います。

【篠田委員】

30分から40分というと結構長いので,それをどのような形で見せるのかがポイントだと思います。積極的に関心を持った人が見るようなものなのか,それともどこかに持っていって無理やり見せるのか,それによって内容も少し変わってくると思います。まだ比較的早い時期ですし,積極的に見たいと思う人はまずいないだろうと考えた方がよいと思います。無理やり見せるというわけにもいかないし,「やりますから来てください。」では来ない,見ないようなタイプのものです。
そこでこの30分から40分の比較的長時間のビデオを見せる場所を考える必要があります。内容としては,大きく論点の分かれるようなものや,余り難しいものは,見る方としては厳しい。やはり基本的には「この制度が導入されます。あなたが選ばれる可能性が非常に高いです。もしあなたが選ばれたら,さあどんなことをやるのでしょうか。」といった内容になると思います。
エンターテイメントとかミステリー小説で言う「視点」,だれの目によって,だれの立場からその物語を語るかということを考慮するとよいと思います。先ほども藤原委員が,今までのドラマでは被告人の「視点」から語られることが多かったとおっしゃいましたが,裁判員にたまたま選ばれてしまった一市民の視点から描き込んでいくと,さしたるサスペンス,スリルの類がなくても,自分の立場に似たところで描かれているということで,結構共感とか危機感を持つものです。
その場合に,見る方のことを考えると,込み入った話はなかなか受け入れてもらいづらいので,単純な事例で,よいとか悪いとか,倫理的な部分で敏感に反応していくような内容のものや,感情的に反応していけるような内容の犯罪,または比較的身近なもの,そういった割と分かりやすいものを取り上げていくとよいと思います。

【戸倉審議官】

一番難しいと思うのは,裁判官と裁判員が協働して一つの結論を出していくという作業が基本にあり,その中でのそれぞれの役割,裁判員の果たす役割をどう見せるのがよいのかということです。映画「12人の怒れる男」のようにある裁判員が奮起して,裁判官と他の人の意見を大きく変えたという劇的な示し方も一つはあるかと思いますが,他方で裁判官は裁判の専門家としてノウハウを提供し,裁判員の方は裁判に慣れていない新鮮な目で感じたことを述べる。それがうまくかみ合って一つの結論が出るという,非常に平凡ながら実際に近いプロセスを示すというやり方もあるかと思います。
いずれいろいろなパターンを作っていくという方法も考えられますが,最初はどういうコンセプトで作るべきか迷うところです。

【藤原委員】

私がもし裁判員に選ばれたとしたら,とても不安に思うことは,検察側がどのような筋立てでどこまで説明してくれるのか,その証拠として挙げられたものが我々に理解できる形で示されるのかということだと思います。検察の示した展開がどういう言葉で伝わって,どのようなものを証拠として認めるかは容疑者でもない限りなかなか分かりません。視聴者であり,かつ裁判員になる可能性のある自分を想定したときに,そのあたりが心配です。

【戸倉審議官】

よほど工夫して,改善したものを作ってお示ししないと,今の裁判のままではだめですね。

【藤原委員】

そうです。もし明日裁判員制度がスタートして,私が一番初めの裁判員の1人として選ばれたとしたら,とても不安に思うところだと思います。

【吉田委員】

今まで我々は裁判にかかわったことはないわけですから,いざ初めて裁判にかかわって自分はその場でどういう役割をしていくのか,例えば法廷で尋問のときにどういうことをするか,あるいは証拠に対してどうかかわっていくのか,評議のときにどういうふうに裁判官は教えてくれて,裁判員は裁判官とどういう協議をしていくか,非常に不安があるわけです。それをドラマ仕立てのビデオの中で,「ふつうの人でもそう無理なくできるのです。」ということを分かりやすく訴えていかなければならない。ドラマを見たことによって大変だと思われると困ります。

【篠田委員】

そうすると逆効果になってしまいますね。

【吉田委員】

逆効果です。「こういう意義のあることだから参加していきましょう。」としなければいけないと思うと,ドラマは非常に興味があるのですけれども,なかなか難しい面があるのではないかと思います。

【戸倉審議官】

隅々まで裁判員の気持ちになって,どう見るか気を配っていないと,かえって逆効果になることもあるのかもしれません。

【吉田委員】

裁判官は司法の専門家ですから,シナリオの段階で我々素人の見る目とは違うかもしれません。

【篠田委員】

ドキュメンタリー仕立てということは考えていないのですか。
30分から40分の間で分かりやすくということで,ドラマだとおもしろそうだというイメージがあると思います。けれども,感情的にはとても喚起されるものがあっても,ナレーションの代わりに会話体で表現しようとすると分量が長くなるし,中身が非常に分かりにくくなります。それを考えると再現ビデオ調の,ドキュメンタリータッチでナレーションとして説明を入れていくと,短時間に一番分かりやすくアピールできると思います。

【井田委員】

心の中で思っていることが聞こえてくるというようにすれば,ある程度は分かると思うのですが。

【篠田委員】

ある程度は分かりますが,ナレーションとせりふで掛け合わせるのでは情報量がとても変わってきます。

【井田委員】

例えば事実認定の問題などは一番難しいと思います。裁判に素人が参加することによって,今と違って格段に改善されるかというと,必ずしもそうではなく,要するに正当化の問題になってきます。出てきた結論は国民の審査の目が入って出てきた結論ですよという正当化の問題だとすると,例えば主人公の裁判員が一言言ったことで,裁判官が「ああそういうこともあったのか,いけない,いけない,ああそうだ。」というわざとらしいものにすると,かえって共感できないような気がします。量刑について,犯人の心理状態はつまりこういう状態だったのではないかと,被告に近い経験を持ったことがあるような裁判員に言わせて,「ああそういうことがあるのなら少し情状酌量を考えなきゃいけませんね。」といった展開の方が比較的わざとらしい話にならなくてよいのではないでしょうか。

【戸倉審議官】

評議に当たって裁判員が裁判官ときちんと議論ができ自分の意見が言えるということを意識して,裁判官が知識をもとに引っ張りすぎてはならないということを前提に,模擬の評議でどうぞ自由にお話ししてくださいというやり方をすると,ほとんど意見が出ないのが現実です。ある程度裁判官が整理した形でノウハウを説明して,こういう枠組みで判断するとよいのではないかと示唆すると少し話が出ます。しかし,いよいよ最後に2つの証拠が対立し,結論を出すときに合理的疑いを超えた事実として認定できるかということは,裁判員は不安だし,分からない。裁判官が誘導することにならない協議を実態としてどうやるかは非常に難しい問題で,悩みの種です。

【吉田委員】

その辺は,今裁判員制度の模擬裁判をおやりになって,心配があるというわけですね。

【楡井刑事局参事官】

評議をどのように運営していったらよいかということを慎重に検討しているところです。それを広報という限られた時間の中で,まだ我々もどうやってよいか評議のイメージが決まっていないところでどのように描いていくかということは,また別の意味から難しい問題で,御意見をお伺いしたいと思うところです。

【藤原委員】

3月までにビデオを1本作って,その後の方針はどのようになりますか。

【戸倉審議官】

例えば評議をするときに模擬裁判をやらなくてもビデオを見れば一応議論ができるという,資料的な裁判のビデオなどが考えられます。1本しか作らないということではないので,組み合わせなどについても御意見を伺いたいと思います。

【藤原委員】

裁判員に選ばれるまでのプロセスだけで1本ビデオを作るという方法もあります。手続や住民台帳なら住民台帳で何をもとにして選ばれるのかをクリアにテクニカルにきちんと説明するだけで30分くらいのものになるのではないでしょうか。まだ裁判所の方でもいろいろ試行錯誤をしている段階では,決まっているセグメントから制作し,シリーズ化して制作する方法もあると思います。

【吉田委員】

仮に40分だとしても,すべてのことをドラマ仕立てで言うのは非常に難しいと思います。ですから,裁判員制度が導入された実際の法廷ではどんな格好で裁判が行われるかを中心に作るという話になると思います。なぜ裁判員制度が今導入されたか,あるいは自分たちが入ったことによって裁判がどう変わってどういう効果が出るかとか,従来とどう変わったかというところまではなかなかこのドラマ1本の中に入れ込むのは難しいかもしれません。

【藤原委員】

どういう理由で辞退することができるかというようなことも明示して,今決まっているところでまずは1本作る。それからもう1つ,実際に4年後にスタートしたときに,裁判員に選ばれた人に,あなたはこういうプロセスを通じて選ばれましたというビデオを見てもらう。さらに,あなたが実際に裁判員として裁判に参加するということになると次はこのようなことが起こりますというビデオをもう1本作っておく。
まず始めの1本は選ばれて,裁判員として本人も同意をして参加するというところまでを,参加できないいろいろな要件や参加したくないという人たちも含めて,こういう選択肢があるということも含めた部分を作る。というふうに区切って作るとよいと思います。そうすると,それはそのセグメントごとに分かりやすい説明として描かれていますから,実際に裁判員制度がスタートしたときにもう一度活用できると思います。特に自治体の説明資料にも使えるのではないでしょうか。

【渡辺委員】

ビデオを作成すること自体に異論はありませんが,全体の戦略がちょっと見えない気がします。導入までの4年間の,どの時点でどんなものを作っていくのかという,全体の設計図みたいなものを示せないでしょうか。その上で,この段階ではこれを作りましょう,規則が固まるこのころになったらこんな手続のパンフレットや教材ビデオ的なものもできるでしょう,それらは広報ビデオ全体の中でこうはめ込まれていきます――といった全体像が欲しい。いきなり来年3月までにコンペ方式で何本,と言われても,そこに何を盛り込んでいったらよいのか考えるのは,私には難しいと思います。もし,どうしても今年度中に1本作るというのなら,井田委員がおっしゃった,何が必要なのか,なぜこういう制度が導入されたのか,参加する人間にはどんなことが求められているのかといったことを,イメージでつかめるようなものにするのがよいのではないかと思います。
また,どういう場で使うかも重要な考慮要因です。シンポジウムやフォーラムの参加者に見せて,制度のイメージをつかんでいただくという形で使うということであれば,そういった作り方というものがあろうかと思います。何となくとりあえず1本作りましたというのでは,中途半端な,将来あまり使いようがないものともなりかねないと危惧するのですが,そこはどう検討されているのでしょうか。

【戸倉審議官】

今伝えることができるのは,法律で決まっていること以上のものはない。そういう意味で,ドラマにしろ何にしろ,情報は変わらないと思いますが,ドラマの方が見やすく親しみやすいのではないかと考えています。
用途については,30分,40分となると通りすがりの人に見てもらうというものではありませんので,シンポジウムや出張講演,出張説明会の際に,見ていただく。そういう少し腰を据えた場で使うというのが原則だろうと考えています。あとは,市町村などいろいろなところにお配りして,何かで集まる際に使ってくださいという方法もあるかと思います。

【井田委員】

あるいはホームページで見られるようにすることはできるのではないでしょうか。

【大須賀広報課付】

ホームページの充実という計画の中で,広報ビデオの動画配信も検討はしています。

【井田委員】

外国の例をいくつか見せるとか,例えばドイツのある主婦がどういう形で裁判にかかわっているかを紹介するとよいのではないかと思っています。

【吉田委員】

そういうものはドラマ仕立てでビデオを一つ作るとしても,もう1つ要るのかもしれません。なぜ裁判員制度が導入されたのか,外国ではどう制度が動いているのか,あるいはまたこの制度が導入されて裁判が変わっていきますということを絵にするのは難しいのかもしれませんが,ナレーションや対談なども入れながら,一種の教材ビデオのようなものも必要かもしれません。

【戸倉審議官】

各地の裁判官が出前講義に行ったとき,最新の情報を見せ,説明や質疑応答をするためのビデオは必要だろうとは思っています。
ドラマ仕立てにしてもドキュメンタリータッチにしても,切り口を変えてたくさん必要と思われる一方で,重複していると言われると非常につらいところがあります。この懇談会で委員の皆様からいろいろな切り口で作る必要性を御指摘いただくと非常に強い力添えをいただいたような気がします。
そのほかにビデオで特にこういうものを作るとよいなどの御意見はございますでしょうか。

【吉田委員】

ビデオの話が出ていますが,例えばテレビで特集番組をやってもらうと見る人の数はビデオ1本に比べれば相当多くなると思いますが,検討はされているのでしょうか。

【大須賀広報課付】

来年の2月12日と13日にNHKスペシャルで裁判員制度を2夜連続で取り上げてもらう予定になっています。1日目は三浦友和と内山理名が主演して裁判員が参加した裁判をモチーフにしたドラマを放映し,2日目に法曹三者がてい談というような形で裁判員制度への期待を議論し合うという構成であると聞いております。

【戸倉審議官】

おかげさまで裁判員制度に関心を持っていただき,特集が企画されています。
少し話題を変えまして,キャラクター,ロゴ,キャッチコピーについて御意見を伺いたいと思います。
裁判所は初めてこのような広報活動をするので,どういうイメージで選択をするべきか,あるいは,キャラクターといってもアニメ的なものもあれば実在する人物とすることも一案であり,どういう方向性でやっていくべきなのか,少しお知恵を拝借したいと思います。
法務省人権擁護局は「人KENまもる君」というキャラクターを作り,ネクタイなどのグッズを作ったりしているようです。

【渡辺委員】

これは,アンパンマンのやなせたかしさんのデザインですね。

【戸倉審議官】

デザインはプロにお願いするとして,裁判員のイメージキャラクターとはどんなものでしょう。

【篠田委員】

秤を持った女神が思いつきますが。

【藤原委員】

ロゴやキャッチコピーはある方が分かりやすいと思いますが,キャラクターは必ず必要かというと疑問があります。これら3つすべて必要かどうかというのも考える余地があると思いますが,ポスターなどいろいろな種類のものを今後提供していくときに,ロゴは一つのグリットになりますから,ある方がよいような気もします。キャッチコピーもスローガン的なものがあるとよいとは思います。けれども,キャラクターがどうしても必要かは正直分かりません。親しみやすいという意味では必要かもしれませんが,重要なのは,ロゴがきちんと入っていることと,コピーに整合性があることではないでしょうか。

【戸倉審議官】

そもそもキャラクターと言ってよいのかどうかもよく分かりませんが,「私は裁判員制度を支えます。」とサポーターのように人物を起用する方法はいかがでしょうか。選挙などはそのような形が多いでしょうか。

【吉田委員】

選挙は明るい選挙というイメージでずっと以前から白いバラをキャラクターというのかロゴというのか分かりませんが,使っていました。
特定の人物を起用してこの人が明るい選挙を推進するキャラクターですと言うのはなかなか難しいかもしれません。

【藤原委員】

今掲示されている選挙の電車の中吊り広告で,1人は大工さん,もう1人は何かの職業の人で,「○○だから選挙に行く」というものがあります。実際にこの人は大工さんなのだろうな,この人は何とかなんだろうなというのが分かるような格好のごくごく普通の市民として載っていて,とてもよいと思いました。
このように,いろいろな顔が見えるということで言えば,普通の人に出てもらうのも一つの方法であると思います。特定の顔ではないので,分かりにくい場合もありますが,何度もいろいろな職業の人たちが出ているという構成がよいと感じます。そうすると何度でもいろいろな人を出せるというメリットもあります。

【井田委員】

市民が出ていて,「私がもし選ばれたら絶対行きます。なぜならばこうだから。」といったことが書いてあるわけですね。

【藤原委員】

通勤時はほかに余り見るものはないし,携帯電話の画面を見てないとすると,中吊り広告は毎日目にしますので効果はあると思います。

【戸倉審議官】

以前,篠田委員から裁判所が作ったポスターは東京の人が見ると非常に違和感があるとの御指摘がありました。言われて見るとサラリーマンを中心に見る都会の人からすると,やや違和感のある組み合わせだったという気はします。そういう意味で,キャラクターにこだわらず,今後こういう文言も作ってみたらよいという御意見があればお聞かせください。

【藤原委員】

色を決めるという方法があるかも知れません。

【篠田委員】

イメージカラーですね。

【藤原委員】

ポスターのバック,中吊り広告のバックにはこの色を使うと決めることもよいかと思います。あるいは縁取りをするという使い方もあると思います。色をある程度決めるとポスターや中吊り広告,パンフレット等もある程度統一感を持たせることができるのではないでしょうか。これはロゴにもかかわってくることかもしれません。

【井田委員】

裁判の色は黒ですか。

【戸倉審議官】

これまでは裁判のイメージカラーが話題になると何者にも染まらないということで黒と言われてきました。

【井田委員】

法服が赤という国があります。例えば,ドイツの憲法裁判所の裁判官の法服は赤色だったと思います。

【戸倉審議官】

イギリスは官職によって紫色の法服で赤いたすきをつける人もいます。アメリカは黒です。外国も黒が比較的多いのでしょうか。黒は権威的なイメージがありますが。
司法修習生のバッジは赤,白,青で,それぞれの色に意味があります。このように色を使ったイメージを考えた経験もあることはあります。
それでは,次に進みまして,模擬裁判や出張講演会,法廷傍聴等についてお聞きしたいと思います。これまで法廷傍聴に来た方に裁判官が説明することはありました。しかし,傍聴人がいるから特に審理を分かりやすくしようという意識は余りなかったように思います。むしろ専門家がやっている裁判を見てもらうというスタンスで,法律家同士の専門的な話をし,尋問も裁判官に分かってもらうための尋問をやっています。このような形を見てもらって,今後皆さんが参加する裁判はこれですよと言うと逆効果であることは間違いない。どういう点に注意して説明するべきかお聞かせ願いたいと思います。

【渡辺委員】

タウンミーティングやシンポジウム等の在り方にも関係しますが,検察審査員の経験者にお手伝いいただくことも考えるとよいと思います。裁判官や弁護士からのいろいろな説明や学者の話もそれはそれで意味があると思いますが,普通の市民からすれば,同じようにいきなり呼び出されて,多分「めんどうくさいな。」とか「いやだな。」と思いつつ検察審査員を務めた人の経験談は興味があると思います。これまでのアンケート結果等によると,審査員の方たちの多くが「最初は乗り気でなかったが,実際にやってみて充実感を覚えた。」などと答えていて,経験が意識を変えていることが伺えると思います。もちろん検察審査員の仕事と今度の裁判員の仕事は,質においても市民側の負担においてもいろいろ違うところはあろうかと思いますが,広い意味での刑事司法手続にかかわった経験を普通の市民から普通の市民に話してもらえれば,裁判官や弁護士といった専門家に高いところから何か言われるよりも,通じるところ,伝わるところがあると思います。

【楡井刑事局参事官】

現在も裁判官の出張講演会資料の中に検察審査員の感想文を盛り込んで紹介してはいますが,より踏み込んだものが必要になるのかもしれません。

【渡辺委員】

生の言葉で語っていただくことに意味があると思います。

【戸倉審議官】

検察審査員のビデオの中に委員の視点で描いた部分もあったはずです。確かにそれを生かすことも考えるべきですね。

【藤原委員】

それを我々にも見せていただきたいと思います。

【戸倉審議官】

そういうものを委員の皆様にどんどん報告することも検討したいと思います。
タウンミーティングの話が出ましたが,タウンミーティングというかシンポジウムのような催しを来年度,少なくとも地裁所在地の50カ所で1回は開催することも考えています。来年11月くらいになると手続に関する規則がある程度できあがりますので,少し具体化したことをお伝えできると思います。来年の後半に開催することを考えていますが,単発の企画という形ではなく,1県で1箇所しかできなくても,いろいろな形で伝わり,それ以後の広報活動の拠点的な企画にしたいといった欲張った考えもありますので,先ほどの検察審査員経験者の体験談も一案ですが,何かアイディアがあればお聞かせください。

【藤原委員】

CDやDVDを地方自治体に訪れる方がモニターで見られるようににして配布するべきです。裁判所が管理したり見せたりすることができないような所でも活用してもらえるように,材料としてデジタルデータを広く提供するとよいかもしれません。
病院やエアポートは待ち時間が長いものですが,そのようなところで見られるとか。何も見るものがないところで裁判員について説明されていたというようにいろいろな手を使うとよいと思います。

【戸倉審議官】

問題はその中身です。それぞれの地方でやるということを前提に,どんな方に出ていただくのがよいでしょうか。

【藤原委員】

裁判員になる可能性はすべての人にあるわけですから,いろいろな地元の方々に出てもらって,そのビデオをきっかけに疑問点や心配なことについてパネリストとして発言してもらえるとよいのではないでしょうか。専門家だけで行わないうがよいかも知れません。
また,ビデオの中に外国の制度のイメージがある方がいろいろな興味をそそられるのではないかと思います。意義をビデオ化することは非常に難しいと思うので,各国でどういう取り組みがなされていて,世界にはどういう制度があって,陪審制度と裁判員制度はどう違うのだということも他国の例を紹介してはどうでしょうか。

【井田委員】

だれでも裁判員になる可能性があるのですから,みんなが集まってきそうな人に声をかけて来てもらうことも考えられます。

【藤原委員】

地元の方と注目度の高い人たちが一緒にパネルになれればとてもよいかもしれません。

【井田委員】

「私が協力します。」といったことを言ってもらうようにすると,「あの人が行くのだったら私も行こう。」といった感じになるかもしれない。

【戸倉審議官】

各県に1人ぐらい出身のタレントがいますね。

【渡辺委員】

一般の方に入っていただくのはもちろん意味がありますし,著名人の応援メッセージみたいものがあってもよいと思います。以前,AIDS対策キャンペーンで,有名タレントやスポーツ選手が入れ替わり立ち代りメッセージを発するというCMがありました。「あの人がメッセージを出している。」ということで非常に注目を浴び,その人のファンがAIDS予防に興味を持つという仕掛けで広報が展開されていました。そうした賛同者の方にパネリストとして登場してもらうと,「単にテレビで一言言ってください。」というよりも,より深い形でメッセージが伝わっていくのではないか気がします。裁判や裁判所に一番遠いと思われているような人が,より効果的かもしれません。

【吉田委員】

せっかく全国的にシンポジウム,パネルディスカッションを展開しようというわけですから,そういうことをやること自体をまず大々的にPRすべきです。地元のマスコミともよく連携をとって,できるのならそこでやったパネルディスカッションなりのエッセンスを全部記事にしてもらうことができれば,いろいろな方々に周知されるわけですから,そういう工夫もするとよいと思います。パネリストについては,今まで委員の皆さんから話があったように,専門家だけではなく市民感覚を持った人に,自分がなったらどうなるということを代弁してもらうということが大事なのではないでしょうか。
それから,先ほど話がありましたが,検察審査員になった人にもパネラーの一人になってもらうと,一般の市民とは少し違った感覚から物が言えるかもしれません。いろいろな人に出ていただいたらよいと思います。ですから専門的なことを議論する一般のシンポジウムとは少し違うかもしれません。

【戸倉審議官】

先日「法の日」の中央行事でアンケートをとりましたが,それなりに回収率がよかったので,全国で行うイベントを利用して一定の書式でアンケート調査を行えば,かなりのサンプル数が集まるという副次的な効果も期待できると考えています。
広報企画全般について何か御意見はございませんか。

【藤原委員】

地方自治体が発行している広報誌の中にも「裁判員制度」という言葉が頻繁に出てくる仕掛けができないかなと思います。短いエッセーでも構いませんが,こちらから出稿して,編集担当者に紙面を埋める材料を提供する。このような編集部に対する広報活動も非常に重要だと思います。誌面を隅から隅まで見る人はいなくても,見れば見たで有効に使える情報ですから,一般の新聞もさることながら,自治体の広報誌も活用するとさらに効果的かと思います。特に今は司法アクセスの話も動いていますので,そういう情報は自治体も広く市民に伝えたいのではないかと思います。

【戸倉審議官】

自治体には,第1回の懇談会で掲示しました「裁判員制度・誕生」のポスターをお送りしています。そのときに各地の裁判所から,可能ならば訪問して,できなければ電話で,基本的にすべての自治体に直接掲示をお願いし,かなり自治体の広報担当者には無理を言って掲示してもらいました。今後このパイプをどう生かしていくかが重要な中,まだ二の矢を継げていないというところもありますが,このような一歩を踏み出し,ある程度のルートはできています。自治体の反応はさまざまですが。

【大須賀広報課付】

まだすべてについて結果を聞いているわけではありませんが,月刊の地域情報誌に特集記事のような形で載せていただいたり,広報誌の囲み記事のような形で載せていただいています。やはりこちらがある程度素材を提供しないと載せてくれませんので,オーダーがあったところには加工したデータを提供しております。

【藤原委員】

広報は向こうから求められなくても,まずは情報を出すというのが鉄則です。その情報を求められればそれは大変喜ぶべきことで,素材はむしろ自分たちが伝えたい形に加工して,載せてくれなくてもどんどん出し続けることが必要ではないかと思います。これからこの制度について細かいところが決まるので,電子メールでも構わないので,漏れなくお伝えしておかなくてはいけないと思っています。

【戸倉審議官】

ニュースのような形でどんどん発信するということですか。

【藤原委員】

そうです。広報部というところは,「こういうものをもらっても困るよね。」と思われたとしても,たくさん情報を送らなくてはいけない部署なのです。日々そういうことをしていなくてはいけない。記者も時間がないので,すぐに書けるような題材は活用してくれることが多い。そういう情報はこちらのストーリーで書けるので,出す側にアドバンテージがあるわけです。紋切り調のニュースリリースだけではなく,幾つかのストーリー立てのものを,歓迎されなくても送り続ける。そのうちに使えるものは使ってもらえると思います。

【大須賀広報課付】

メーリングリストみたいなものを作るということですか。

【藤原委員】

そうです。

【戸倉審議官】

迷惑メールだと思われると困りますが。

【藤原委員】

昔新聞社にはファックスが山のように届きました。その中できちんと目立つためにはロゴマークがしっかりしているとか,例えばカルタでできているといった,ユーモラスなものであることだと思います。ちょっとしたスペースを埋めるときに使えるような題材を,外国の例であればドキュメントタリー調にこういうことが起こったとか,とにかく記者の人が書きたくなるようなものを送り続けるわけです。

【戸倉審議官】

新聞社だけではなくて,地方自治体の広報部等にも送るということですね。

【藤原委員】

そうです。広報担当者が1行を埋めるのに苦労することもあるからです。
それから紙面全部が同じ論調で書かれていたら読む人たちも飽きてくるので,小さなコラムでも何でも,少し雰囲気の変わったものをうまく盛り合わせていくのが紙面を作る編集部の手腕です。ですから,そういう材料になるようなものをいろいろな形で提供しておけば,うまく掲載してもらえるかもしれません。また,予定した広告が載らなかったり広告を出す予定の会社が不祥事を起こしたりとか,いろいろなことで印刷に回る寸前に記事が必要になるときがあります。そのようなときにいつでも使ってもらえるような題材を送っておけばよいと思います。

【戸倉審議官】

裁判員一口メモとでもいうものですか。

【藤原委員】

そうです。そういうものでもよいと思います。

【戸倉審議官】

同じ情報を投げるにしてもいろいろな形のものを用意しておくと,受ける側は使い勝手がよいわけですね。

【藤原委員】

困ったときには,裁判員制度の何かがあったなとなればいいわけです。

【井田委員】

キャラクター,ロゴ,キャッチコピーや自分が裁判員制度になったらどういうことを言って,どういうふうに裁判を変えたいかといった意見を募集して,上位10人に世界司法参加の旅行のようなものに行ってもらい,そのことをまた書いてもらうというのもおもしろそうです。

【戸倉審議官】

懸賞のような形は余り考えたことはありませんでしたが,公募自体が一つのニュースバリューになりそうですね。

【吉田委員】

よく選挙の啓発でも小中学生や高校生のポスターコンクールや新有権者の作文を募集して,良いものには賞品を出すということをやっていました。そんなやり方はもうそれ自体によって関心を持ってもらうわけです。

【藤原委員】

タイミングとしてはもう遅いかと思いますが,1月の成人式で裁判員制度のことと司法アクセスとを新成人に確実に伝わるようにパッケージ化して情報提供するとよいと思います。成人するということはいろいろな義務と権利が生じてくるわけですから,制度を説明したものや,権利や義務に関する情報を,成人式を迎えた方に伝えてほしいという言い方で自治体に対して情報を出すと,毎年成人式で伝えられるので,とてもよいと思います。

【戸倉審議官】

昔,二十歳の献血キャンペーンが成人式に絡めていましたね。

【藤原委員】

何年かおきに必ず行くといえば,ひとつは自動車免許の更新があります。手続のために待っていなくてはならない時間がありますので,ビデオなどで情報を流すとよいのではないでしょうか。

【篠田委員】

裁判員制度とか裁判というと「裁判員に当たっちゃったらいやだな,当たっても行かないぞ。」というのが今の本音ではないかと思います。これを「裁判」ではなく「犯罪」として大きくとらえると,関心は非常に高くなるだろうと思います。例えば防犯ということであれば,町内単位で皆さんが関心を持ってくれると思います。刑事裁判というものの前に犯罪があり,もしかすると自分が巻き込まれるかもしれません。凶悪事件が増えて,危機感も高まっている中で防犯が大きくクローズアップされています。「防犯」が入り口であれば,出口に位置するのは「裁判」なので,そこにどういうふうにかかわっていくか,普通に生活している人の視点から一連の流れの中でとらえていくことができるのではないでしょうか。となると,防犯とか犯罪に関連した催し,例えばお巡りさんがやってきて,「こういうことをすると狙われますよ。」といった説明をするときに裁判員の説明もつけてもらうというように,自主企画だけでなく,既にある催しに入れてもらうということができればよいと思います。人の集まる入り口を持っているところにこの裁判員制度に関する情報を,例えば簡単な講演でもよいですし,短いビデオでもよいですし,こんなことをやっていますといった話をさせてもらうということもできると思います。
もう一つ,模擬裁判とかタウンミーティング,パネルディスカッション自体に参加する人は少ないとは思いますが,どういう顔ぶれをそろえるかによっては,マスコミが取材に来るということもありますから,多少のギャラを払って,マスコミが注目するであろう著名人をそろえてはいかがでしょうか。また,私自身は推理作家協会に所属していますが,その中でもベストセラー作家の錚々たるメンバーがいて,クライムノベルという犯罪小説の書き手がたくさんいます。ところが犯罪,特に警察・裁判についてはなかなか取材できないと書き手は悩んでいる状態です。そういう中で取材チャンスを与えて,知名度のある方々を何人かでも引き出してくることができれば,直接体験させなくても,取材して新聞や週刊誌に取り上げられる形になれば,印象に残ると思います。

【戸倉審議官】

以前,福岡の新聞記者に裁判員の評議を体験していただき,アンケートに答えてもらいました。「やってみるとやっぱりこういう難しさがあった。」とか,「こういうものだったのかと分かった。」との答えがいくつかありました。本当は一度体験していただくのが一番よいのと思います。私もやってみましたが大変難しい。裁判官としてどう分かっていただくか,評議がとても難しいと思いました。考えてみたら,証人は素人でその点は昔から変わらないわけですが,証人に質問して裁判員に分かりやすく答えてもらうにはどう工夫すればよいのか分からない面もありますし,証人に分かりやすく答えなさいといってもプロではありませんから,藤原委員がおっしゃったように,どういう形で証拠が示されるかも分からず本当に難しい。答えが分かりやすく出てくるための作業はまだまだ手探り状態です。

【藤原委員】

目撃者といえども人間の情報がいかに不確かであるかについての調査などがあるくらいですから,悩ましいことだろうとは思います。
裁判員制度について知りたいときに,連絡窓口として役職名のような形のキャラクターにしてしまうとよいかと思います。

【戸倉審議官】

どこの裁判所にもその人がいるということですか。

【藤原委員】

そうです。例えば「さかな君」というタレントは魚にとても詳しい。彼が持っている情報とキャラクターの名前が同じなわけです。そういう「裁判員」といったらその人に必ず行き着くような役職といいますか,何か呼称があれば,例えば学校の授業で聞いた子供たちが取材に来るとか宿題の題材にするときにもよいのではないでしょうか。

【井田委員】

教育テレビに出てくるようなイメージだと,裁判員博士とでもいったものでしょうか。

【藤原委員】

そうすると,分からない情報や質問があるときに聞きやすくなります。第一その組織がどうなっているかも分からない人たちが,例えば「広報課」に行き当たるのは難しいと思います。担当者が変わってもその役職に必ず行き当たるように,法曹三者でも呼称を決めるとよいと感じます。

【戸倉審議官】

ありがとうございました。
この4回の懇談会で御意見を伺うばかりでしたが,少しお休みさせていただき,その間にいただいた意見をもとにいろいろな企画を計画し,ものによっては実施していきたいと思います。我々から御説明できるものができましたら,御覧いただいて,また御意見,御批判をいただいて次のステップにつなげていきたいと思います。