裁判員制度広報に関する懇談会(第6回)

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日時
平成17年11月25日(金) 午後3時00分から5時00分まで
場所
最高裁判所公平審理室
出席者
(委 員)
井田 良,篠田節子,平木典子,藤原まり子,吉田弘正,渡辺雅昭(五十音順・敬称略)
(裁判所)
戸倉審議官,中村総務局第一課長,河本総務局参事官,佐伯刑事局参事官,大須賀広報課付

席上配付資料

  1. 意見をお聞きしたい点(第5回,第6回)
    • 裁判員制度広報に関する基本的な考え方について
      • 刑事裁判や裁判員の役割の具体的イメージを伝える広報に重点を置くという方針は適当か。
      • 平成17年度を含む4年間の広報活動の各段階における目標設定の在り方
      • 法曹三者における連携,分担の在り方
    • 平成17年度に実施し又は実施予定の広報活動について
      • 目標と具体的施策のマッチング
      • ビデオ,ブックレット,パンフレット等の広報ツールの意図,内容の評価及びその活用方法
      • フォーラムの意図と構成の評価
      • メディアを使った広報の在り方
      • 裁判員制度に関心の低い者を引きつけるための広報活動の在り方
    • 分かり易く迅速な裁判とするための検討状況,参加し易い環境整備のための検討状況の広報について
      • 多くの事項で検討中の段階で,何を伝えるべきか。
      • 途中経過を伝えた場合のネガティブなリアクションをどう考えるか。
    • 効果測定について

配付資料

資料1
裁判員制度ブックレット-はじまる!私たちが参加する裁判-
資料2
「裁判員制度がはじまります!」パンフレット(改訂版)
資料3-1
裁判員制度全国フォーラム:構成概要(136KB)
資料3-2
裁判員制度全国フォーラム:採録記事
資料3-3
裁判員制度全国フォーラムアンケート集計(10月実施分速報)(236KB)
資料3-4
裁判員制度全国フォーラムの感想(83KB)
資料4
ホームページ(トップページ)(148KB)
資料5
裁判員制度広告掲載状況(39KB)

第6回会議録

【戸倉審議官】

それでは第6回の裁判員制度広報に関する懇談会を開催します。まず,初めてこの会議に出席させていただきます,刑事局参事官の佐伯を御紹介します。

【佐伯刑事局参事官】

佐伯でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【戸倉審議官】

本日は,前回の懇談会で配布しました「意見をお聞きしたい点(第5回,第6回)」のうち,2つ目の丸印以降の部分を中心に御意見を伺いたいと考えております。
最初に,前回の懇談会以降にできた,「裁判員制度のブックレット」のコンセプト等について,広報課から御説明させていただきます。

【大須賀広報課付】

それでは,お手元にお配りしております,資料1「裁判員制度のブックレット」を御覧ください。この冊子は,国民の皆様が裁判員になることに対して抱かれておられます,不安とか負担感を軽減するための情報提供ツールという位置付けで,高校生以上の制度に関心を持っている方々に対して,刑事裁判や裁判員制度の内容を詳しく説明するものとして作りました。内容をかいつまんで申し上げますと,まず,女優の内山理名さんと刑事局長の対談を2ページ以降に掲載しました。内山理名さんが,今年2月にNHKスペシャルというテレビ番組で裁判員役を演じられたことを踏まえまして,裁判員制度に関する不安や事実認定の方法などについて,率直な疑問をぶつけていただき,刑事局長と議論していただいています。
38ページ以降には,高校生と裁判官の対話という形で,刑事裁判手続についての一般的な解説を掲載しています。
74ページ以降には,裁判員制度に関係するデータを抜粋して掲載しています。
このブックレットは30万部作りました。裁判所がこれほど大部に広報用資料を作ることは,これまでなかったことです。裁判員制度全国フォーラムや出張講演の折に配付したり,高校以上の学校,図書館,自治体にサンプル的にお送りして,授業や市民講座などで幅広く活用していただけるようお願いし,御希望があれば,各地の裁判所から,追加してお配りする体制になっています。
今後は,商工会議所等に所属されている経営者の方々にもお送りして,研修等の機会に,裁判員制度についての理解を深めていただくといった形で御活用いただきたいと考えております。

【戸倉審議官】

資料2は,以前法曹三者で作ったパンフレットを改訂するにあたり,ブックレットと同じ大きさにしたものです。今後これらをTPOに合わせて使い分けながら,活用して行きたいと考えています。

【平木委員】

「これはどうなっているのだろう。」と思いながら読んでいると,必ず次にその質問があって,答えが出てくるという感じで,満遍なくカバーしたなというのが,ブックレットを読んでの第一印象です。ただ,これを読むには結構時間がかかりますね。
こういう内容を対談形式にするにはどうするか,相当工夫をなさったかなと思いながら読みました。

【大須賀広報課付】

内山さんは非常に理解の早い方で,率直に疑問をぶつけていただけたので,スムーズに対談を行うことができました。

【井田委員】

このくらいやさしく書くと,単調な文章になりがちなので,読み手の興味が続くかどうか疑問もあります。でも,これ以上やさしく書けないでしょうし,内容を正確にしたままやさしく解説するというのは無理でしょう。

【藤原委員】

ブックレットを増刷するとしたら,1冊当たりどの位の費用がかかりますか。

【大須賀広報課付】

諸費用を込めると30円位だと思います。

【藤原委員】

まず,版下を作るまでに費用がかかってきますから,あとの部数は比較的自由になるということですね。

【大須賀広報課付】

レイアウトなどは,基本的には広報課が編集ソフトを使って作っていますが,今回は,レイアウトについても業者に再検討をお願いしました。

【藤原委員】

お金をかけるとすればそこですね。費用があるのなら,プロのデザイナーに頼んで,長文でも読んでもらえるように工夫するとよいと思います。
それから,第1回の懇談会でも発言したかもしれませんが,これを成人式に全国で配っていただけないでしょうか。この冊子は,成人した若者にとっては1つのまとまった情報として,とても重要なものだと思います。

【吉田委員】

この編集は,広告代理店などは入らず,最高裁でなさったのですか。

【大須賀広報課付】

印刷会社は入札で選びました。イラストや色使い,レタリングなどは印刷会社からの提案です。

【河本総務局参事官】

基本の編集は最高裁判所で行いました。

【吉田委員】

Ⅰ部の裁判員制度とⅡ部の刑事裁判を比べると,両方とも非常に網羅的な内容になっていますが,内山さんと刑事局長の対談の方が,読みやすく割合すんなりと理解できるような気がしました。刑事裁判の方は,少し固いかなという感じです。専門家から見るとよいのかもしれませんが。

【戸倉審議官】

おっしゃるとおりⅡ部の刑事裁判は,内容自体も手続の説明で,固いものですね。

【大須賀広報課付】

印刷会社から漢字が多いが大丈夫かと言われましたが,そこはふりがなをふって,多少なりとも読みやすくしたつもりです。

【戸倉審議官】

もうこの内容になると,本当に裁判に関心があり,かなり手続を知りたいという人でないと分からないと思います。

【大須賀広報課付】

高校生の座談会ですが,高校生だけが読むことを想定しているわけではありません。大人でも,ニュースなどを見て関心をお持ちになり,「あれってどうなっているのかな。」と思われたときに,これを見ていただくとどこかに書いてあるというものにしたつもりです。

【藤原委員】

ブックレットには,手続に関しては比較的詳しく書いてありますが,量刑に関しての考え方がもう少し書いてあるとよいと思いました。アンケート結果を見たり,自分がもし裁判員になったと想定してみると,やはり量刑については非常に自信がないので,量刑に関する考え方が,もう少し書いてあるとよいと思います。
例えば,運転免許の更新に行くと,スピード違反や飲酒運転をした者が,過失であっても,現行法ではいかに過去の量刑よりも重い量刑で罰せられるかを重々言われます。要するに,それだけ運転は危険を伴うし,自分が加害者になったときには,どれ位の刑が科されるかということも知るわけです。やはり量刑についても,国民がおおよそ,何かを感覚的にでも持っている方がよいような感じはします。このブックレットの続きの資料を作ろうと考えていらっしゃるのであれば,少し量刑に言及したものにしていただければよいと思います。

【戸倉審議官】

こういう犯罪は,大体このような量刑になっているという具体的な例も含めてですね。

【藤原委員】

はい。過去の例でもよいですし,もちろん裁判員裁判での量刑の考え方がもう決まっているのであれば,その例を挙げて説明するということでもよいと思います。今,交通事故では,過失でも,人が亡くなってしまった場合は,相当刑が重くなりましたよね。

【戸倉審議官】

例えば,無謀な運転がありますね,スピード違反とか。

【平木委員】

量刑と関係があると思われますが,なぜ刑事裁判なのかという問いに答えられていないですね。ブックレットのどこを見ても,民事裁判ではなく,刑事裁判に国民が参加することの意味があるという説明がないのです。

【戸倉審議官】

そう言われてみると,陪審か参審かという司法制度改革審議会の議論でも,もう既に,刑事裁判のイメージでしたね。

【平木委員】

諸外国もそうだから,当たり前と何となく思ってきたのでが,よく考えると,なぜ刑事裁判に国民が参加するのかという問いには答えがないのです。

【井田委員】

教科書的な答えをすると,公益の問題だということですね。
民事裁判は,私人の問題だから,公益と余り関係ないと言ってしまえば関係ありません。刑事裁判は,殺された方,あるいは盗られた物に対する埋め合わせといった個別の問題だけではなくて,犯罪によって乱された秩序の回復といった公益の問題です。

【平木委員】

そのあたりを何か一言説明すると,「そうか,私たちが参加することの意味があるのね。」ともう少し分かるかなと思います。

【藤原委員】

今の話は,いわば私人の損失ではなくて,社会にとっての損失の問題だということですね。

【戸倉審議官】

アメリカでは,まだ民事でも陪審員の関与することがかなり多いのですが,イギリスなどでは,国の責任を問うような事件等,比較的関心の高いものに限定されてきています。

【吉田委員】

藤原委員からお話がありました,成人式にブックレットを配るのも大変結構だと思いますが,30万部ではとても足りないと思いますので,増刷も考える必要があります。
これは,フォーラムで配る以外にも,各学校に配ること等も考えておられるのですか。

【戸倉審議官】

学校には,もし教材としてお使いいただけるということであれば必要な量をお送りしますと伝えた上で,何部かサンプルをお送りしています。初めから大量に送りつけますと,戸惑われると思いますので。

【吉田委員】

Ⅰ部は読んですぐに理解することができると思いますが,Ⅱ部の刑事裁判は,誰かが行って,これを教材にしたり,いろいろな映像等を使って説明するというように,補完的な材料も使いながらレクチャーをするとよいような性質のものではないかなという気がします。これだけを読んで理解しろといってもなかなか大変かもしれません。

【戸倉審議官】

裁判所では出前講義と呼んでいますが,裁判官が各地の学校に伺って,生徒さんに説明をしたりしています。その際にはブックレットをぜひ使ってくださいと裁判官にもお願いしています。
確かに,Ⅱ部は何がしかの解説がないと難しい内容かもしれませんね。

【平木委員】

60ページの下から3行目の「きっといい結論が導けるはずです」の「はず」とか,それから61ページの上から2行目の,「そんな心配は全く必要ありません」の「全く」という言葉は,こういうふうに言われると,誰かが保証している感じがして,私はひっかかりました。これはあえてこう強調して言った方がよいのでしょうか。

【戸倉審議官】

実際は心配があるといえばあるでしょうが,全くそういうことをお考えいただく必要はないという思いが強く出ていますね。
少なくとも,法律の知識がないからとても議論ができないという話は,裁判官としても,そういうことは絶対しません,そうならないように配慮しますと,はっきりお約束しておきたいところだからこその表現だと思います。
「いい結論が導かれるはずです」というのは,裁判員は正しい結論をすぐに自分で出さなければならないのか,正しい意見を最初に言わないといけないのではないかという心配はかなりあると思いますが,そうではなくて,中途半端でも思い付きでも,いろいろな人が意見を言っているうちに,議論は自然によい結論になるはずですと,経験上の考えを言っています。

【河本総務局参事官】

もう決まっているのだからといった,押しつけがましい感じの印象を与えかねないということですね。

【平木委員】

はい,そういう印象があります。こういう言葉使いは私が嫌いだからというのもありますが。

【藤原委員】

もっと多面的な議論ができるという印象の方がよいのかもしれませんね。それがそもそもの目標であったわけですし。
もし刷り直すのであれば,前回も申し上げましたけれども,この「証拠を減らす」と書いてあるのを修正していただきたいと思います。実はこの1,2週間の間に,これに関して,ある夕刊紙で,要するに,「そもそも初めから論点を絞って,おおよその道筋を初めに想定した上で裁判が行われるということは,無実の人が無実であるということを証明するのが極めて困難である。」というようなことを書いていたと思います。

【戸倉審議官】

この「証拠の量を減らす」という話は,説明不足ですので,修正したいと思っています。
従来の証拠調べでは,まさに有罪か無罪かを判断する証拠以外の,事件の周辺部についての証拠が提出されていたり,同じような証拠が幾つも出ていたり,選択せずに大量に証拠が提出されて,その選別は裁判官が行っています。裁判員裁判ですと,証拠を採用する段階で,ある程度選別しておかないと,多分裁判員が混乱されるだろうという趣旨です。端的に書きすぎたために,それが十分伝わっていないのだと思います。

【藤原委員】

そもそもそんなにたくさんの証拠が,あり余るほどあるというのも国民は知りませんので。

【戸倉審議官】

どれだけ証拠が多いかというイメージがないのですね。資料3-3のフォーラムのアンケート結果でも,我々は「負担が重いから読む量を減らしてほしい」という意見が多いかなと思っていたのですが,意外とそうでもないのは,そのせいかと思っています。

【平木委員】

そういう意味で,60ページの下の絵に「争点を絞って審理をコンパクトに」と書いてありますが,「このコンパクトにするのは誰」という感想になると思います。

【戸倉審議官】

これはまさに専門家が行うことですね。

【平木委員】

そうですね。そのようなことを書いた方がいいかもしれません。「前は裁判官がやっていたのに,今度は誰がやるのだろう。」と思うかもしれませんから。

【河本総務局参事官】

ここのところは本当にセンシティブなので,もう少し神経を細かくして,表現を工夫した方がよいですね。
公判前整理手続は,基本的には,例えば先ほどの無罪主張云々の話で言うと,「無罪を主張することをまずはっきりさせて,そのために必要な立証はしっかりできるし,無罪を主張する被告人の側は,無罪主張のための資料であれば,捜査資料でも見られる。」という話なのです。そう考えると,今の「フジ」なり「現代」の批判は出てこないはずなので,そこの説明が完全に抜けているのですね。余り細かくしてしまうと読みづらいかと思ったのですが,本来の趣旨や本当に必要なことの本質をついているのであれば説明してもいいかもしれません。

【戸倉審議官】

裁判員が疑問を持たれたら,それを解明するために必要な証拠は当然見るという大前提は,頭の中にはあるのですけれども,表現として出ていないという問題があるかもしれません。裁判員は,証拠が足りない,粗い裁判に参加して,粗い結論を出すということに満足するわけでは決してないということは,我々も十分承知しています。

【井田委員】

60ページの下の絵の「証拠の量を減らす」という説明は,左の「争点を絞って審理をコンパクトに」という欄に吸収はできないのですか。争点を絞るという説明から減らすという解説が独立しているので,何か別の意味があるような感じがするのだと思います。

【篠田委員】

量刑についての考え方も書いてほしいとか,読みにくいとか,いろいろ疑問が出されていますが,例えば,量刑について説明しようとすると,裁判所の側から書いていると,どうしても欠落する部分があります。また,なぜ刑事裁判なのという疑問も,余りにも当たり前すぎてしまって,裁判所の方だけで制度の解説を書かれているときには疑問としてさえ上がってこないのではありませんか。証拠の数を減らすという表現についても,一般的な意味で証拠と言われたときに我々がイメージする場合の証拠と裁判所の職員の方が通常使われる証拠という言葉では全く意味が違うのだと思います。
わかりやすいものを作るのであれば,編集する段階で,外部の人を編集委員というような形で入れていただくと,制度について何から何まで把握してらっしゃる裁判所の職員や専門家の方々からは全く見えない部分が見えてきます。今,委員の方々から御指摘があったような議論が編集の段階でできると,言葉使い等も一般の人の感覚で理解しやすいものになり,もっと有意義なのではないかなと思います。
「証拠の量を減らす」などは一番気になる部分で,何も知らない私が言葉だけ聞くと,「ある結論に向かって恣意的に証拠を選別して採用していく」というイメージになってしまいます。それで,あと「証拠を絞ってコンパクトに」というと,もうあらかじめレールが敷かれていて,それに従ってスムーズに裁判が進むように整理されてしまうのではないか,その整理をするのは裁判所だけなのではないかと思ってしまいます。けれども,公判前整理手続は,被告人と弁護人がきちんと話し合い,検察官も加わって論点をはっきりさせていくという,被告人の側と検察,そして裁判所の三者の共同作業なのですね。この冊子の文章を読んでもその辺がよく分からなくて,裁判所の方が全部やってくれそうなイメージにもなります。

【大須賀広報課付】

これを作るときに,印刷会社の校正担当者から,表現やいわゆる業界用語みたいなものを指摘されました。そういうものも外の方の目で見るとすぐ分かるのですね。

【戸倉審議官】

これに限らず,これまで作ったものも,ある意味では,全部我々だけが考えて作っている面があります。

【河本総務局参事官】

公的機関がこういう広報物を作るとき,例えば選挙などが一番典型なのかもしれませんが,外部の有識者の委員の御意見を事前に聞くということは,結構よくされていることなのでしょうか。

【吉田委員】

外部の人の意見を聞くこともしますが,何社かの広告代理店に,こういうものを持ってきてほしいと大体の考え方を伝えて,企画を出してもらい,どういうものを選ぶかを議論します。
ブックレットの後半部分のような内容は,ライターが書くともう少し分かりやすいかもしれません。専門家がお書きになるのは,間違いがなくて結構なのですが,まず専門家以外の方が書いて,専門家がそれをチェックしていくというのも1つのやり方だと思います。

【渡辺委員】

昨年このブックレットを作ると聞いて,きっと一回はこの広報懇に意見を求められる機会があるのだろうと,実は思っていました。実際はお声がかかりませんでしたが。篠田委員がご指摘になったとおりで,広報懇がふさわしいかどうかはともかく,裁判所だけでなく外部の目でチェックするという視点がやはり必要だろうと思います。
ただ,そうしたちょっと残念な点を別にしても,これまであまり語られてこなかった,量刑とはどういうもので,専門家はどういう議論をして導き出してきているのか,そしてその判断がいいのかどうかも含めて国民とともに考えたいのだ,といったメッセージが刑事局長のお話の中に入っていたりして,内容としては非常にいいものになっているなと思いました。これまで,ほかの論点を一生懸命説明しなければならなくて,広報対象から落ちていたところが,うまくすくい取れているのではないか思います。個人的には,先ほど議論になった「量刑相場」のようなものをブックレットなどに出すのはなかなか難しいと思いますが。
今後の課題としては,各地のフォーラムのアンケート結果などでも明らかなように,国民が関心を寄せる大きなテーマの一つである「報復への懸念」の問題にどう答えていくかがあるのではないでしょうか。生半可なことは言えないところでもあるので,どう伝え,理解を得ていくかがとても大きな重たいテーマなのではないかと思いました。
それから,69ページに裁判員の不適格事由の説明があります。基本的には法文を少しブレークダウンして書いているのかなという気がしますけれども,成年被後見人とか被保佐人とか,これだけ読むと何のことだかよく分からない用語がところどころ残っていると思うので,その辺は今後ブラッシュアップするときに工夫をしていただきたいと思います。

【戸倉審議官】

私が刑事事件を担当していたときは,被告人たちから報復をされるといった,具体的な身の危険を感じたことがありません。ところが,イタリアやアメリカ等の裁判官は別の感じ方をしています。
報復されないようにガチガチに警備しますよと言っても,そんな生活をずっと今後強いられるというのは苦痛ですから,かえって不安をあおるだけでしょうし,かといって,報復するような人はいませんよとも言えません。裁判官に通常そういうことが起きないのは,裁判官だからなのかもしれず,一般の方が裁判員として関与された場合に,被告人や関係者が別の行動傾向を示すかどうかは,私も確かに分かりません。報復の心配について,どう説明して不安を軽減するかは,非常に難しいですね。

【河本総務局参事官】

報復については皆さん非常に不安に感じていらっしゃいまして,フォーラムでも必ず出てきます。京都ではラグビー選手の大八木さんという方がパネリストとして出席され,その人まで報復を恐れているし,みんなも怖いのだという話になりました。多分自分が刑を言い渡されたら,絶対裁判員の顔を覚えて,出所した後に絶対に報復に行くというのが人間なのではないかという議論が相当ありました。裁判官はよく平気でいられますねといった話も出てきました。

【戸倉審議官】

一般の方は,刑事裁判は刑罰を科し,場合によっては自分はやっていないという人でも証拠があれば有罪になり,重い刑になるということは,当然恨まれる行動だろうという前提なのですね。そこはちょっと我々裁判官の感覚とギャップがあるのかもしれません。

【平木委員】

裁判官からにらまれたら怖いけれど,裁判員からにらまれても怖くないと思いますけれども。

【戸倉審議官】

我々も委員の皆様にお忙しいのにいろいろなことで御意見を聞いて,また更にこれまでもという遠慮がありましたが,渡辺委員からおっしゃっていただいたとおりであれば,少しお言葉に甘えさせていただいて,今後の企画のときはいろいろ御相談をさせていただきたいと考えております。
さて,既に話題に出ておりますが,現在全国50ヶ所で,裁判員制度について特に関心のある方を対象に説明をするというフォーラムを開催中で,本日まで33ヶ所での開催を終えております。来年1月29日の東京会場が最後です。これについても,今後の企画を考える上で,いろいろ御意見を伺わなければいけないと感じておるところです。実際に御覧いただいておりませんので,概要について,説明をさせていただきます。

【河本総務局参事官】

11月23日の函館会場で33ヶ所の開催となりました。一会場に大体300人から500人の定員であるところ,ほぼ毎回満席の状態です。資料3-1のとおり,放火事件のビデオを見ていただき,各地で刑事裁判を担当している裁判官が今の刑事裁判や裁判員制度の概略について説明し,地元の法曹三者と地元の有識者3名位でパネルディスカッションをするという形になっています。パネルディスカッションの後半には,会場から集めた質問を踏まえてコーディネーターがパネリストや法曹三者に疑問を投げかけています。パネリストの人選状況は,資料3-1の2枚目のとおりです。ほぼ各地元の方々,参加していただいた方々の感覚に基づいたディスカッションが行われていて,私にとっても非常に興味深かったディスカッションでした。
また,フォーラムに参加していただいた方だけではなく,その地域の方々にパネルディスカッションの内容をお知らせするという趣旨で,資料3-2のとおり,開催地の地方新聞に採録記事が掲載されます。10段抜きで記事が載り,下に長谷川京子さんの広告が入っております。
資料3-3は,会場からのアンケート結果の10月分の集計です。Q2の「参加したいと思いますか。」という問に対しては,全体の80%以上の方が「参加したい」または「義務であればやむを得ない」と感じておられて,非常に制度に対して積極的な方々にお集まりいただいたということが言えるのではないかと思います。同時に,Q1「どんなメリットがあると思いますか。」に関しては,「裁判が身近なものになる」とか,「刑事裁判の実相がわかる」というお答えが非常に多いようです。Q3の負担感や抵抗感に関しては,やはり先ほど御指摘がありましたように,「被告人側からの報復が非常に恐ろしい」ということが一つ。また,これは政府の世論調査等でも非常に多くを占めておりましたけれども,「極めて重責であり自信がない」,この2つに負担感,抵抗感を感じているという結果でした。
Q4の裁判の進め方に対して一番多く望まれていたのは,証拠の量を減らすのではなくて,分かりやすくしてくれということが何よりも多かったように感じております。
アンケート結果の参考データとして,回答者のデータがあります。職業を概観すると,会社員,主婦に始まり,比較的広い職業の方に参加していただいているということが見てとれます。また,年齢を見ると,30代から50代までの,いわゆる働き盛りの方々がほぼ半分を占めておられ,実際に社会の中で活動しておられる方にも相当な関心を持って来ていただいていると言えます。

【戸倉審議官】

多くて500人という規模でも,50ヶ所で開催するのは相当なエネルギーとコストがかかるわけですが,1億人からおられる裁判員対象者に対する広報活動として,果たしてこういうやり方が,参加意識を高めていただくために有効な活動なのかとの懸念もあり,内部でもかなり議論しました。その結果,できるだけ広がりを持たせようと,採録記事が掲載される契約をしました。
まず,どういう効果があるのか,今後どういう点に気をつけた方がいいのか,ぜひ御意見を伺いたい第1点です。

【吉田委員】

地方の新聞社が共催になって採録記事が出ることによって,かなり一般の方々に対するPRもできるわけですから,非常に効果があるのではないかと私は思います。

【渡辺委員】

この採録記事の二次利用は検討されているのでしょうか。例えば,ホームページを開いたら,フォーラムの内容を読めるような仕掛けです。著作権の問題等いろいろクリアしなくてはいけない問題はありますが,これだけの手間をかけた成果が,一回新聞に載って終わってしまうのではもったいないと思います。

【戸倉審議官】

編集記事ですので,諸権利は新聞社にありますが,頼めば何とかなるのでしょうか。

【渡辺委員】

事前に契約で詰めておくべきだったと思いますが,裁判所のホームページに当該記事を掲載している新聞社のホームページにリンクを張るようなことができないか,交渉してみるのも一案かと思います。

【河本総務局参事官】

権利関係をきちんとして,技術面の工夫もある程度考えて紹介できるようにするといいのかもしれませんね。

【渡辺委員】

パネリストの肖像権の問題等も出てくるでしょうから,最初の段階でそういったこともクリアされておくと,いろいろ使えると思います。

【藤原委員】

やはり自分が参加したものではなくても,どのような方がどのようなことを言っていらっしゃるかは,とても興味があると思います。

【戸倉審議官】

このような企画は,やはり来年以降も,1年に1回位は各地でやった方がよいのでしょうか。

【平木委員】

長く続けることに意味があるような気がします。

【戸倉審議官】

来年以降,より効果的な企画にするには,新聞の広告で参加を募って来ていただく形になるのか,それともターゲットを絞って広報活動をすべきか,いろいろなやり方があると思います。また,別のものを合わせてやった方がよいという考えもあろうかと思います。今後の企画のあり方について,何かお知恵があればぜひお聞かせ願いたいのですが。

【藤原委員】

これはこちらから企画を提案していますが,本当は取材を受けた形でマスコミに何度も何度も取り上げられる結果になる方が良いと思います。何かきっかけが必要になるので,憲法記念日などを機会として捉える。要するに記念日を活用する。あるいは,制度がスタートしてからの活動につなげられるようなものとか。
今年はこの地域,と限定して裁判員制度にかかわるイベントを成人式前後にやるというのも一つだと思います。成人式を迎えたわかものたちが興味のある出演者を選んで参加していただく,同じぐらいの年代の方々という選び方もあるかもしれません。成人式を迎えた人にとって,自分たちが成人するということはこういうことだということを認識してもらうことと,この機会にこの制度を身近に感じてもらうこと,その両方が必要だと思います。それが定期的に行われ,地域が次々広がっていくという方法もあると思います。
必ず覚えておいてもらうには,まず日にちを限定するのが重要です。すでになにかの日と制定されている日に各地で行うとか。

【戸倉審議官】

今回のフォーラムも10月1日という「法の日」にスタートしていますが,会場の都合などでどうしても数カ月になってしまいました。

【藤原委員】

地域のテレビ局で中継してくれると,イベントとしてはよいですね。会場にいる人とテレビを見ている人の両方同時に働きかけるということできます。

【戸倉審議官】

今回のパネリストは,できるだけ参加者と同じ目線というコンセプトで出ていただきましたが,どういう方をパネリストで呼ぶと,興味を持って聞いていただけるのか,あるいは国民が聞きたい話を話していただけるのでしょうか。

【平木委員】

私は大学でお呼びしたい講演者に,いつも一コママンガを書く方を呼びたいと思っています。一コママンガを書く人は,とても凝縮して何かを考えていらっしゃるという気がしているので,そういう方がフォーラムに来られるとどんなことを語られるのかなと思いました。

【井田委員】

朝まで生テレビか何かに出てくるような人などはどうでしょう。

【戸倉審議官】

思い切って反対意見の人を呼ぶ勇気がなく,何とかディスカッションをまとめていただける方にお願いしがちなので,会場のアンケートなどでは,対立点がない,ディスカッションと言いながら全然ディスカッションになってないという厳しい御意見もありました。私は嫌だとおっしゃる方がおられますと,ディスカッションとしてはなかなか盛り上がり,ピンと緊張が走りました。反対意見があると論点が明確になりますが,ずっと反対のままだったらどうしようという心配もありました。(笑)

【吉田委員】

パネリストにアナウンサーはいらっしゃいますが,ニュースキャスターとか論説者がいないようですが。

【河本総務局参事官】

新聞社の論説員にコーディネーターをお願いしています。

【篠田委員】

例えば,労組とか農協といったところにもお願いしてみると,それぞれのお立場からの発見があり,特徴ある御意見が聞けるのではないかと思います。そういった方々がパネリストとして呼ばれるということは,今度はその大きな組織の人々に動員をかけられるということですし,否応なく話題作りができるし影響力が大きくなりますので,そういった方々を呼んでみるのもよいのではないでしょうか。

【戸倉審議官】

そういう組織,あるいはもう少しいろいろ特別な関心をお持ちの団体等に対する広報についても,後ほどまた御意見伺いたいと思いますが,重点を置いてやっていかなければいけない取り組みだとは考えております。

【篠田委員】

多分一番理想的なのは,最初は全国的にこういった大規模なイベントを展開し,それを核としてそれぞれ自主的に学習会みたいなものを開いてもらえるような形にすることだろうと思います。

【河本総務局参事官】

例えば,来年はある程度対象者を絞ってセミナーのようなものにするという方法もあるかと思いますが,効果はいかがでしょうか。一般参加のフォーラムとは別に,企業等に対するセミナーです。

【藤原委員】

経済団体のトップの方々には,ぜひ早い時期に雇用者サイドの問題として認識していただきたいですね。それは非常に重要だと思います。

【渡辺委員】

企業への働きかけは,地域によっていろいろやっていますよね。先日もトヨタ自動車の会長に検事総長がお会いになっていましたし,例えば自動車会社であれば系列のディーラーさん等を集めていただいて,そこに判事や検事が出向いて裁判員制度について話をするという方法もあると思います。役割分担をしたり,連携をしたりしながら,法曹三者がアプローチを広げていくべきだと思います。

【平木委員】

セミナーなどは,例えば,部長研修のようなところでなさってもいいような気がします。会社を動かしている人たちが一応それを知るということはとても大切で,向こうが還元するかどうかは別として,やりませんかと提案すれば,研修担当の人が考えないことはないような気もします。
ただ,講師として出かけて行くのが大変でしょうけれども。

【戸倉審議官】

管理職とか経営者にはっきり協力するという意識がないと,個々の従業員の人が裁判員として行こうと思っても,最後には障害として残ってしまいます。そこをきちんと働きかけて意識を持ってもらわないと,最終的にうまくいかないので,ぜひやりたいと思います。

【藤原委員】

そうだとすれば,まずは日経連とか,経団連とか,同友会とか,いわゆる全国の組織を束ねてらっしゃるところへ話しに行って,各地域でも会合を開催するよう要請しては。

【戸倉審議官】

これまで,制度ができて1年半余りは,制度の内容をできるだけ知っていただき,評議についてもいろいろ説明して,安心感を持ってもらおうという発想でしたが,来年以降は,例えば選任手続など,これから作る仕組みも勝手に作るのではなく,国民の方々あるいは使用者の方々の意識調査を十分行い,その結果を反映させていくつもりです。また,裁判の中身についても,ビデオをいろいろな方に見ていただいて,御意見を聞きながら,作っていきたいと思っています。具体的には,来年1月にアンケート調査を行って,その結果を踏まえて制度を作ることになっています。
来年以降は,このような,我々の検討している作業がよりよいものを目指していること,あるいは国民から見て参加しやすい仕組みづくりになるように工夫していることをアピールしていきたいと考えております。
また,さきほどお話がありました,経済団体とか使用者とかいった方にも,どういう仕組みなら従業員を出しやすいかということをどんどん聞いていきたいと考えています。
やはりこの制度については,作る過程を明らかにし,国民の意見を聞いて作り上げていき,それが結果としてできるだけ参加しやすいものになっていればよいと思っています。
一方で,今の段階で見せるとかえって不安になるのではないかという懸念があり,気をつけるべきことがあるだろうとも思っています。

【藤原委員】

例えば,裁判員を選出するときの手続をどういうタイミングで行って,どの時期にお知らせすることがよいのかという検討に結論を出すためには,先ほどからおっしゃっているような経営サイドの方々の意見を聞くのがよいと思います。もちろん,働いている人にも聞かなくてはいけないと思いますが。自分たちが準備に向けて踏んでいきたいステップをおおよそのタイムテーブルとして示して,「この段階で意見がある方はアドレスのここへ」,「このプロセスに必要なことに関する意見はまたここへ」というような形で,常に情報がインプットされるような窓口を設けて意見を寄せてもらうことが非常に重要だと思います。
気がつかない点に気づかせてもらう。初めての試みで,気がつかなくてはいけない点がどこにあるかそれが分からない。国民に参加を求めて初めて成り立つ制度ですから,国民がどのステージでもある程度自由に疑問をぶつけることもできれば,意見も言えるし,要請もできるそのような仕組みを確保しつつ少しずつ丁寧に議論できればと思います。それを全部生かした制度作りができるかどうかはまた別の問題だと思いますけれども,そういうチャンネルを常にオープンにしおくのは必要なことだと思います。
それから,新聞に載った記事のコピーや冊子等,どういう資料があるか問い合わせる欄や,出前講義・模擬裁判を依頼するために,対象者はどういう人を想定して,何について話してほしいのかを書き込んでいただく欄を作るという方法もあります。常に風通しをよくするといいますか,情報の行き来ができるような形にするのが一番重要なのではないかなと思います。アンケート等は重要なインプットとして使えるわけですけれども,興味を示し,理解しようとしてくれる国民とどう対話を続けるかその方策の検討も重要だと思います。
意見とか疑問とか不安があれば書き込んでくださいというために,おおよそどういう手続でどういうことを決めていきたいというプランがあるならば,その骨子を示すべきです。反応がたくさんは来るかもしれませんが,全く関係のない滅茶苦茶な要請が来るとは思わないし,質問も要請もそれなりに示唆に富んだものなのではないかなと思います。
昨年の懇談会から伺っていますが,要するに裁判所は,用のない人はほとんど来たことがないところだから,今まではそういう意思の疎通がなされるような仕組みになってないわけです。ここへ来て初めて,国民すべてがある程度が不安に思っているようなこととか,こういうことでは困るというような要請のようなものがあったとすれば,もちろんすべてを生かすことは到底無理ですけれども,そういう情報を集めながら裁判所サイドでも議論を進めたいのなら,そういう仕組みがとても重要なような気がします。

【戸倉審議官】

裁判員制度ホームページでは,メールで御意見を伺えるようになっています。

【藤原委員】

今,インターネット上では,ブログやSNS等といった,一つのテーマについていろいろな意見をつけ,それを読んだ人が更に自分の意見をそこへ書き込むというものが増えています。どうしてもブログ形式にしなくてはいけないわけではありませんが,例えば,裁判員候補者を選任する手続という項目があれば,選任するときの留意点としてどういうことがあるか,どういうことが支障になると思われるかをそこに書けるわけです。そういう意見を述べる道しるべになるような項目が挙げてあればよいのではないでしょうか。
「裁判員制度ブックレット」についても提供できる内容がすべて掲載されているなら,このブックレットに関する質問等を受け付ける項目も併せて設ければよいのではないでしょうか。

【大須賀広報課付】

裁判員制度ホームページにある御意見箱は,現在はテーマを決めずに単に様々なメッセージをメールでいただく形式になっています。

【藤原委員】

それを整理するのは大変な手間でしょう。

【大須賀広報課付】

サイト開設からこれまでに20通位のメールが来ていまして,中には非常に示唆に富んだものもありますので,今の御指摘も参考にしてまいりたいと思います。

【渡辺委員】

先ほどの1月に実施するアンケート調査には関心があります。裁判所からのメッセージとして「国民の声を聞いて制度を作ります。」ということを,もちろん100%反映させることはできないでしょうが,広報戦略として打ち出すというのはよいのではないかと思います。
戸倉審議官がおっしゃっていたような,心配や懸念というものも分からなくもないのですが,それをあれこれ心配するよりも,検討過程での矛盾や対立,意見の相違をどんどん出していっていいのではないでしょうか。意見の相違がまた評判になったり記事になったりすれば,「それはそれで議論が深まっていってよいことなのだ」と受け止めるくらいのスタンスで制度を作った方がよいと思います。100人が100人納得する制度などできないわけですし,そもそも裁判員制度に反対だという人たちもたくさんいるでしょうから,賛否両論の渦の中で常に何かが議論されている,常に最高裁に,もちろん最高裁判所に限りませんが,弾や矢が飛んでくるという状況を作った方がむしろおもしろいと思います。

【戸倉審議官】

いずれにしても,これからの制度を作る動きが,国民から見て非常にずれていたり,使い勝手が悪いという問題があると,国民参加はかなり難しくなるでしょう。ほかの制度とは異なり,御意見をどんどん聞いていく必要もあると思っておりまして,そういうことをやっていること自体もかなりのアピールにはなるかなと思っております。

【藤原委員】

新聞広告にも,裁判員制度ホームページのURLを載せるとインバイティングでよいのではないでしょうか。そして「今,制度設計の途上にあって,いろいろなことを考慮しながらどのような制度にするかということを考えている期間です。」というようなことを書いて,意見がある方はどうぞと掲載しても構わないと思います。掲載された広告には「お問い合わせは最寄りの地方裁判所」などとありますが,電話番号も書かれていませんし,これではほとんど誰も来ない気がします(笑)。新聞等の広告の中に御意見メールのアドレスなどを書けば,もっとメールが来ると思います。

【戸倉審議官】

ところで,既にお話にも出ていますが,11月16日から裁判員制度専用のホームページを立ち上げ,これまでの課題でありました御意見箱やキッズコーナーも設けています。まだ立ち上げたばかりで,内容は不十分ではありますが,今後充実させたいと思っております。

【大須賀広報課付】

キッズページの中では,裁判にかかわる人ということで,裁判官や弁護人等について,振り仮名付きで説明しています。クイズコーナーもあり,楽しみながら見ることができると思います。絵は幼稚園児向きなキャラですが,中身は裁判のことですから,やや難しい説明もあります。これから修正していくべき点は修正していきたいと思っています。大人も楽しめるキッズコーナーだと思っています。

【吉田委員】

子どもがアクセスしても,大人はアクセスしないのじゃないかと思いますが,そんなことないのでしょうか。

【大須賀広報課付】

私などは企業や省庁のホームページ等を見ると,キッズコーナーを見て楽しんでいますので,大人も結構見てくれるかなと思っています。

【井田委員】

子供が宿題を出されて,ホームページにアクセスし,それについてお父さんやお母さんに聞いたりするという場合がありますから。

【藤原委員】

裁判については,社会科では出てきますよね。

【戸倉審議官】

小学校の高学年ですね。

【大須賀広報課付】

社会科の授業で,裁判など国の仕組みといった項目が出てきたら,ある程度理解してもらえる位のイメージで作りました。

【戸倉審議官】

全国フォーラムでも質問がたくさん出ますので,項目を整理して,どんどんQ&Aに盛り込んで充実させ,折角いただいた質問などを決して無駄にしないようにしていきたいと思っております。

【渡辺委員】

最高裁のホームページに「法曹三者の模擬裁判を実施しました」という記事が掲載されていましたが,写真と催しを開いたという事実の紹介しか載っていませんでした。なぜ参加された方たちの感想などを載せなかったのかなという疑問があります。
ある模擬裁判の裁判員をなさった方に伺うと,「私も当初,人を裁く自信がないという懸念があったけれども,実際評議してみて,裁判とは,事実はどうだったのか,一つ一つ証拠を積み重ね,見きわめながら科学的・合理的に判断していく営みだということが,よく分かった。」とおっしゃっていました。「ただ,量刑の評議にまで入らなかったので,量刑に入ったらまた違う悩みがあるのだろうけれども。」とも言われていて,非常に説得力があったのですが,結局そのような方の感想などが共有化されないのはもったいないと思うのです。折角ホームページがあるのですから,今後のフォーラムや模擬裁判等で出てくる,多くの人のいろいろな意見や感想をどのように紹介していくのかといった問題意識も大切にされた方がよいのではないかと思いました。
それから,最高裁の裁判員制度のホームページには,なぜ法務省や日弁連の裁判員制度のページにもアクセスできるような仕掛けがないのかなという疑問があります。法務省や日弁連のページには,最高裁のホームページにすぐに入れるようにリンクが張ってあります。法曹三者の間で力点を置いて説明をしたい点や,表現ぶりなどに違いがあるのは分からなくもないですが,やはり今,三者で裁判員制度を定着させていこう,いろいろな人にこの制度について理解を深めてもらおうというときなので,少なくとも三者の間では「こんな試みをここではやっている」ということを互いにポンポンと飛んで見られるような関係を作った方がよいのではないかと思いました。

【大須賀広報課付】

裁判所ホームページのトップページは,既に弁護士会等と相互にリンクしています。裁判員制度のホームページについても,早急に検討します。

【吉田委員】

インターネットで言えば,明るい選挙推進協会のサイトというものがあります。今,若者の選挙の投票率が非常に悪いのですが,そういう人たちにPRしようということで,インターネットムービーというのを始めたのです。毎月1本ずつ位,2~30分位の映画を作って,インターネット上で放映しています。なかなか好評のようですので,裁判員制度についても,今すぐに実現するのは難しいかもしれませんが,考えてみるのもよいのかなという気もします。

【大須賀広報課付】

裁判員制度ホームページでは,既に刑事裁判手続についての広報ビデオを掲載しています。ダウンロードはできませんが,ストリーミング配信で,普通にインターネットができる環境でしたら,動画として御覧になれます。

【渡辺委員】

掲載されているのは,辰己琢郎さんらが出演しているものですね。

【大須賀広報課付】

そうです。

【渡辺委員】

前回も申し上げましたが,あのビデオは,内容が難しすぎるところがあると思います。

【大須賀広報課付】

今後,コンテンツは充実させていきたいと思っております。

【戸倉審議官】

ところで,雑誌広告も既に掲載を始めています。ビジネスパーソンに重点を置いて訴えかけようという方針です。この中には通常の広告以外に,タイアップ広告という形で,裁判官が語ることで,裁判員制度がどんなものか,裁判官とはどんな人なのだろうといった疑問にもお答えしようという企画も織り混ぜています。

【藤原委員】

資料5によると,航空会社の機内誌もあるのですね。

【戸倉審議官】

ほかに読むものがないというときに,ぜひ読んでいただきたいという趣旨で掲載します。
広報効果の測定についてもいろいろ御相談したかったのですが,もう時間になってしまいました。
次回以降の日程ですが,次回は平成18年4月以降の広報の計画と全体像について,御意見をぜひ伺いたいので,2月ごろ開催したいと思っております。
それでは,本日もお忙しい中いろいろ御意見をいただきましてありがとうございました。