裁判員経験者の座談会(令和2年11月5日)

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令和2年11月5日、東京地方裁判所において、裁判員を経験された方々にお集まりいただき座談会を開催しました。座談会では、裁判員裁判にご参加いただいたときのことだけでなく、裁判員に選ばれる前から裁判員の職務を終えて普段の生活に戻られた現在のご感想まで、いろいろなお話をしていただきました。
ここでは、座談会でお話しいただいた内容の一部をご紹介します。

☆この座談会の模様は、政府広報テレビ番組で放送されました。

裁判員経験者及び司会者(裁判官)のお写真

左から京極さん(大学職員)、永渕裁判官(司会者)、室山さん(会社員)、髙島さん(会社員)

裁判員に選ばれるまで

  • 裁判員経験前に抱いていた裁判員裁判のイメージを教えてください。
    • (京極さん)裁判員裁判が全く身近にない生活でしたので、イメージがなかったというのが正直な感想です。
    • (室山さん)周りに裁判員を経験された方がいなかったので制度自体があることは知っていましたが、まさか自分が選ばれるとは思っていませんでした。
  • 裁判員に選ばれることに不安はありませんでしたか。
    • (京極さん)裁判所に来るまでは、不安でいっぱいでした。実際に始まると裁判官から分かりやすく説明していただけたので、参加するごとに不安は消えていきました。
    • (髙島さん)法律の知識が全くない状態ですので、裁判員裁判に参加してお役に立てるか不安に感じていましたが、必要な知識は、裁判官が詳しく説明してくれましたので、知識がないことで困ったことはありませんでした。
  • お仕事やご家庭とどのように調整されましたか。
    • (京極さん)かなり早めにスケジュールを伺っていて、職場の理解もあり、大きな支障はありませんでした。また、小学生の子供がいるのですが、夕方までには裁判所を出ることもできたので、育児と裁判員の両立も十分可能でした。
    • (室山さん)仕事を休むために、私の代わりとなる方と調整する必要がありますので、その辺りが大変でした。裁判員に選ばれてから裁判を行うまでの日にちがもう少しあれば、余裕を持って仕事の調整ができると思います。家族は「頑張ってきて」と送り出してくれました。
  • 裁判員に選ばれたときの職場やご家族の反応はどうでしたか。
    • (室山さん)子どもがかなり喜んでいました。職場も理解があって「頑張ってきてね」と送り出してくれましたし、「私もやってみたいんだよ」と言ってくれる方もいました。
    • (髙島さん)私が会社で裁判員に選ばれた第1号でした。今後、別の社員が選ばれたときの手続の参考にしたいと、快く送り出してくれました。担当する事件が重大な事件ですので、「本当に大丈夫なの」とも家族などから言われましたが、実際に経験してみて危険な目に遭うことはなかったので、安心して臨みました。

座談会の様子

座談会の様子

実際に経験されて

  • 被告人が有罪かどうか、有罪の場合どのような刑にするのかを判断することに不安や葛藤はありましたか。
    • (京極さん)生活の中では想像ができない出来事を考えないといけないので、非常に葛藤がありましたが、裁判官の方々のサポートや、評議の中で、何をどのように考えていけばいいのか話し合う中で乗り越えることができたと思います。
    • (室山さん)裁判員として参加している間は、目の前のことに一生懸命で、他の裁判員や裁判官と一緒にすごく考えて結論を出したので、それで良かったと思います。つらいというわけではありませんが、むしろ裁判員が終わって日常の生活に戻ってから、本当にそれで良かったのかなとか、もしかしたら違った結論もあったのかなということを考える機会が増えたと思います。
      (室山さんの発言を受けて永渕裁判官)私自身は、チームで本当によくいろいろな議論をして考えて悩んだ末に出した結論だから、それでもう我々は十分仕事を尽くしたからもうこれで良いんですっていうお話をするようにしています。あらかじめ正解があって、その正解を探すというような仕事ではないので議論を尽くして出した結論、ある意味それは全て正解なんだろうと思っています。
  • 裁判員裁判の審理は分かりやすかったですか。
    • (髙島さん)裁判というと、すごく難しいイメージがあったんですけれども、実際に参加してみると検察官も弁護人も非常に分かりやすい資料で説明をしていただいたなと思っています。イメージではA4の更半紙の小難しい書類を何枚も見ながら進めていくのかなと思ったんですけど、実際に出てきた資料がパワーポイントの色付きの資料で、素人目でも分かるような言葉の使い方とか、非常にそういったところが工夫されているなと感じました。
    • (室山さん)検察官や弁護人の出された資料が分かりやすくて、何を私たちが見ればいいのか的を得ていて、非常に良い資料でした。
  • 評議は話しやすかったですか(評議:法廷での証拠調べの結果をもとに、裁判員と裁判官が話し合い、有罪かどうか、有罪の場合どのような刑にするか決める手続)。
    • (京極さん)裁判長がいろいろ考えを整理しながら、裁判員全員が公平に意見を言える環境を作ってくれましたので、私自身も自分の伝えたい事を伝えられたと思います。
    • (髙島さん)裁判長が上手く仕切ってくれ、皆さんの意見を引き出してくれたと思います。皆で意見が違うときもあるんですが、それが否定されるのではなくて、それも踏まえて皆でどう考えましょうかというふうに上手く議論を進めてもらえたので、意見が言いやすかったです。
  • 意見が必ず一致するとは限らないと思いますが、意見が違う中で議論を進めることをどのように感じましたか。ストレスを感じませんでしたか。
    • (京極さん)ストレスには感じませんでした。自分とは違う意見を聞くと、どうしてそんなふうに考えるのかな、と自分の中で整理する時間は多少かかりました。最初に裁判長から、「チームで担当するものです。考えが途中で変わってもいいんです。」と言われていましたので、ほかの方の意見を柔軟に自分の中に取り入れたいと思っていました。
    • (室山さん)見方は人それぞれでしたので、それに対して私の理解が深まった部分もあります。
    • (髙島さん)いろいろな人の意見を聞いている中で、自分の考えを見直してみようかと思うときがありました。裁判員6人と補充裁判員2人の8人で議論すると、厚みが違うといいますか、皆で議論した上での結論が出てくるので、それが裁判員制度の良いところなのかなと感じました。
  • 裁判員を経験された感想を教えてください。
    • (京極さん)貴重な時間だったなと感じていますし、自分が経験したことを自分の中で完結してしまうのではなく、外に発信できるお役に立てればいいなと感じています。また、自分の専門ではない部分でいろいろな方の意見を聞けて、普段接しない考え方に接することができたことにやりがいを感じました。
    • (室山さん)裁判について勉強できただけでなく、事件が起きた時にはいろいろな背景があるんだよっていうのを、判決だけに目が行きがちなんですけど、その結論が出るまでにはいろいろな話を聞いて、いろいろな過程があってというのを知ることができたことがすごく良い経験だったと思います。
    • (髙島さん)すごく良い経験をさせてもらったと思います。裁判の流れを理解でき、ニュースの見方が変わりました。この事件はどこが争点になっていて、どんな刑期になるのかといったことにも興味を持つようになったので、良い経験ができたと思っています。

将来裁判員になられる方へ

  • 将来裁判員になられる方へメッセージをお願いします。
    • (京極さん)最初に封書を受け取ったときには、非常に驚かれる方、あまり前向きになれない方もいらっしゃると思います。私自身も迷うところもありましたが、実際に裁判員を経験して司法が身近になり、非常に貴重な経験となりました。終わった後はポジティブな感想しかないので、封書を受け取られた方は、参加を前向きに考えていただけたらいいなと思います。
    • (室山さん)実際にやってみると、いろいろと学ぶ機会も多く、良い経験になりました。不安になられるかもしれませんが、ぜひチャレンジして欲しいと思います。
    • (髙島さん)裁判員制度で求められているのは、法律知識でなくて一般人の常識や感覚だと実感しました。不安に思うことがあったとしても、裁判官やいろいろな方がフォローしてくれますので、不安に感じず、前向きに参加いただければいいなと思います。

裁判員制度へのご協力をお願いいたします!

裁判に参加することに不安を感じる方もいらっしゃると思いますが、法律知識は必要ありませんし、みなさんが安心して裁判員を務められるよう、裁判官や職員がサポートします。
今後とも、裁判員制度へのご理解とご協力をお願いします。

さいたん